INTERVIEW 06

青梅の山の魅力を伝える
古民家カフェの店主夫妻

小原 久典
北村 ポーリン

  • カナダで出合い、23区内と青梅の2拠点生活へ

    JR沢井駅と御嶽駅の中ほどにあるのが、夫妻が営む「沢井マウンテンカフェ」。カナダで生まれ育ち母国語は英語という日系三世のポーリンさんと北米で駐在員として働いていた小原さんは、カナダで出合い結婚し、日本へ。山系アクティビティが大好きなポーリンさんは、好きが高じて日本でアクティビティ会社「アドベンチャーディバズ」を起業した。同じく山歩きなどのアクティビティが好きな夫の小原さんも合流。週末は東京23区内にある事務所兼住宅から、青梅・御岳エリアへ出向きツアーを催行する日々。「御岳エリアに活動拠点がほしいねと話していたところに、縁あってこの古民家を紹介してもらったんです」と小原さん。決め手は庭に立つ樹齢200年以上の紅葉。大きな枝ぶりにひと目惚れしたというふたり。ただこの大樹以外は、古民家も庭も空き家状態が長く続き、荒れ放題だった…。

    憧れの古民家リノベに奮闘する日々

    「庭はジャングル、家はお化け屋敷みたいで本当にここが活動拠点になるの?と不安しかなかった(笑)」とポーリンさん。その一方で、手を加えれば絶対に唯一無二の場所になると確信していた小原さん。ここからふたりの古民家リノベ奮闘記が始まった。動画配信サイトを見ながらリノベ方法を学んだり、古民家をリノベしたスポットに出向いて観察したり。寝泊まりしながら、ペンキを塗ったり、障子や襖を張り替えたりコツコツと手を加えていった。当初は、ポーリンさんの会社の活動拠点にする予定だったが、少しずつ家や庭がきれいになるにつれ、「この美しい山の風景を多くの人とシェアしたい」とふたりは古民家をカフェにすることを決めた。オープンと同時にコロナ禍になってしまったが、2023年時点ではポーリンさん主催のツアー客のみならず、山登りはできないけど山を眺めるのは大好きという幅広い山好きたちに愛される一軒になっている。

    山系アクティビティ「ロゲイニング」で青梅をアピール

    ふたりはカフェをオープンさせたあとも2拠点生活をしながら、ポーリンさんの会社主催のアウトドアイベントを青梅で開催している。なかでも2022年に好評だったのが、「ぐるぐるアドベンチャー ロゲイニング大会in沢井」。ロゲイニングとは、地図とコンパスを使って山や街に配置されたチェックポイントを探すアウトドアスポーツのこと。各チェックポイントには点数が設定され、制限時間内にいかに高得点を獲得するか?知能と体力をフルに使うゲームだ。青梅市沢井の山や川沿いを歩きに歩き、寺社や大木など沢井の素晴らしさを感じてもらえるポイントを探した。チェックポイントが決まったら、次は許可取り。ここで活躍してくれたのが地元の協力者たち。檀家さんからお寺に許可を取ってもらったり、あの大木は誰の土地のものなのか許可先を探してもらったり。地元の協力がなければ実施できなかったと振り返る。無事に開催されたロゲイニング大会は、380人も参加する盛況ぶり。参加者に手渡される地図には、各チェックポイントの説明文が載っている。「これを読んでもらうだけでも、青梅の自然や歴史の素晴らしさをわかってもらえたはず」と笑顔のふたり。大成功に終わった昨年に続き、今年2023年は5月21日(日)に第2回目を予定中。詳しくは、大会公式サイトをチェック。

    美しい里山と理解あるコミュニティが魅力

    「この景色だけを見たらかなり遠くへ来た気持ちになりますが、ここ東京ですからね」と、カフェの縁側に立ちながら小原さんは笑う。地方移住の失敗談で聞くような“村八分”なんて言葉は、ここにはないと教えてくれた。「昔は都心へ通勤するサラリーマンだった、なんて人がたくさんいるんです。都会と青梅の両方をわかっている人が多い分だけ、我々のように新しいことをやりたい移住者にも理解があって、オープンに受け入れてくれる気がします」と小原さん。カナダから日本へ、そして青梅へやって来たポーリンさんに、どんな人と青梅の相性がいいか尋ねてみた。答えは、「適度に便利、適度に不便。そして自然に近い場所で暮らしたい。そんな人は青梅がぴったり! 北米の自然はスケールが大きいけど、こんなきれいな里山はないもんね」と笑顔。まずは、週末だけでも遊びに来て青梅との相性をチェックしてみるもいいのでは? そこから知り合いが増えて、青梅がより楽しくなったら引っ越せばいい。都心と青梅は近いので、都心での生活や人間関係、仕事を諦めることはないんだと語ってくれた。手始めにふたりに会いに「沢井マウンテンカフェ」へ足を運んでみては?

    Profile

    小原久典  | カフェ経営
    北村ポーリン| アクティビティ会社経営

    小原さんは宮崎生まれの東京育ち、60代。ポーリンさんはカナダ出身の日系三世、50代。アウトドアアクティビティが大好きなふたりは公私ともに最良のパートナーで、東京23区内と青梅市沢井の2拠点生活を満喫中。小原さんのお気に入りスポットは、カフェの裏山から登れる「惣岳山」までハイキングをすること。週に何度か往復1時間30分ほど山の中を歩いたり走ったりしている。ポーリンさんのお気に入りスポットは、カフェの庭に座って紅葉の大樹を眺めること。ここが私の居場所だと感じさせてくれるという。

    取材:2023年3月

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