インタビュー
INTERVIEW 03
美しく静かな里山に暮らす
日本画家と翻訳・文筆家
コール・ノートン
ノートン 晶
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スローライフに憧れていたふたり
「実は2~3年でアメリカに戻る予定でした」と語るのは、画家であるアメリカ人の夫と暮らすノートン晶さん。2017年に移住してから、今年6回目の冬を迎える。画家の夫と翻訳・ライターの妻というクリエイター夫婦が、青梅にとどまる理由とは?
コールさんの出身地ミルウォーキーで暮らすふたりの願いは、いつの日か自然が近い場所でスローライフを送ること。そんな願いを胸にいだきながら、コールさんが師事することになる水墨画家・白浪氏に会いに青梅へ。「この静けさと山の近さ。制作に集中できる環境。ここだ!と思いました」と当時を振り返るコールさん。かたや大学時代からオーガニックやバイオダイナミック農法などに関心が高く、日本でもアメリカでも仕事と住環境のミスマッチにジレンマを感じていた晶さんも、「青梅なら空気がよく、人とゆるやかにつながりながら生きていけるのでは?」と感じたという。ふたりはその直感に導かれ里山に囲まれた茅葺き屋根のお寺、聞修院がある黒沢エリアに今も暮らしている。
自然に生きる美しい命を描く
ふたりのアトリエ兼住居の一軒家は、青梅駅からバスで20分ほどの場所にある。家から徒歩すぐの黒沢川沿いを散歩するのが日課のふたり。「ホタルやカワセミが見られたり、小さな昆虫や美しい草花に出合えたり。夫が散歩中にスケッチした生き物は、みんな絵になりました」と笑う晶さん。聞修院で開かれたコールさんの個展に登場した屏風絵『生命流転』には、カワセミやユリなどまさにコールさんが出会った生き物たちがしっかりと描かれている。「ここに描いた動植物は全部青梅で見たものなんですよとお話すると、都心から見に来た人はもちろん、青梅の人も“こんなきれいなものがどこにあるの?”と驚いていました」とコールさんは微笑む。
青梅の人々とゆるやかにつながる
青梅市内でも精力的に個展やデッサン教室を主宰するコールさんをサポートする晶さんは、ライターとして市を広報するさまざまな媒体に関わることも。「市の仕事で青梅の人々にインタビューすることで多くの人とご縁ができ、お互いを知るいいきっかけになりました。青梅にはかつて都心で活躍された方や海外留学経験者、夫のようなアーティストの方も多くいるので、いろんな人がつながればおもしろいことが生まれそう」と晶さんは期待を語ってくれた。去年、晶さんは市内事業者代表としてとして移住定住促進プラン策定懇談会に参加。国際カップルならではのインバウンド需要も見据えた視点で、市と意見交換を続けている。コールさんは絵を通じ、晶さんは文章や言葉を通じて国内外へ青梅のよさを伝えている。
アーティストが暮らしやすい現代の逗留地
そんなふたりの仕事以外の暮らしぶりはといえば、コールさんはプロも走りに来るというロードバイクコースを自転車で走ったり、晶さんは長年の夢でもあった畑を借りて野菜を作ったりと、とてもおだやか。「近所でおいしい卵が買えるんです。その新鮮な卵で作った卵かけごはんをふたりで食べているときが幸せ。移住してきてよかったなあと思って」と笑い合うふたり。青梅に移住し、より健全な心身を手に入れたと語るコールさんは、「青梅で描きたいものがまだまだたくさんある。もっともっと描きたいね」と制作意欲にあふれている。かつて画家や作家が青梅に逗留したように、ふたりの逗留もまだまだ続きそうだ。
Profile
コール・ノートン |画家
ノートン 晶 |写真家・アートディレクター水墨画や日本画を描く画家のコールさんは、アメリカ・ウィスコンシン州ミルウォーキー出身、30代。翻訳家・ライターでもある晶さんは、福岡県出身、30代。東京で出会い結婚したふたりは、日本やアメリカで暮らしたのち、2017年に青梅市に移住。晶さんは自身の仕事のほか、日本とアメリカで個展を開くコールさんのサポート役も担っている。ふたりのお気に入りスポットは、コールさんの出身地と同様においしいビールが飲める店「青梅麦酒」と、静けさが心地よい寺「聞修院」や「玉泉寺」。
取材:2022年8月