INTERVIEW 20

自然と未来志向の世界を行き来する
Uターン移住の共働き夫婦

大谷 広樹
大谷 優佳

  • 愛する地元に戻って始まった新婚生活

    「青梅市出身の父と奥多摩町出身の母のもとに生まれ、家族の活動範囲は西多摩エリアが中心でした。一度は地元を離れてみたかったんです」と笑顔で語るのは、2024年にUターン移住を果たした大谷広樹さん。その隣で微笑む妻・優佳さんは神奈川県横浜市の出身。青梅への移住に抵抗はなかったのだろうか?「幼少期は転勤族で、九州や海外など各地を転々として育ちました。ですから、横浜に限らず様々な地域への愛着があって(笑)。広樹さんが地元愛が強いことを知ったうえでお付き合いしていたので、青梅移住は私たちにとって自然な流れでした。抵抗はまったくなかったですね」

    ふたりが出会ったのは、コロナ禍が始まった2020年。隔離やステイホームといった制約の中、人との距離を感じる時間が続いた数年間だった。そんな時期を経て結婚を機に、親や地元の仲間が身近にいる青梅に拠点を移したことは、ふたりにとって大きな安心感につながった。

    自然と駅近、心地よい暮らしが広がる新築の家

    ふたりが暮らすのは、新築の庭付き一軒家。建築中の様子を見た瞬間、「ここに暮らそう!」と決めたという。羽村など周辺エリアでも物件を見学したり、家を一から建てたりすることも一度は検討したが、最終的には青梅市内の物件に決めた。「家を建てるのに適した土地を探すのが予想以上に難しくて。古民家を自力でリノベーションする方法もありましたが、共働きの僕たちにはあまりイメージはなく、新たな暮らしを、新築の住まいでと考えていました」と広樹さん。

    共に都心に通勤することを考慮し、「駅から距離のある実家の近くよりは、駅近の方が理想」と青梅駅から徒歩10分圏内の新築物件に決めた。青梅市内の主要エリアの特徴を把握していたことも、住居選びに迷いが少なかった要因と言えるだろう。駅近でありながら、2階から見える美しい山並みに心が癒され、友人たちを招いて庭でバーベキューを楽しむなど、都心方面ではなかなか得られない戸建てならではの自由な暮らしを満喫している。

    移住支援を活用し、都心通勤を楽しむ

    青梅への移住を見据え、ふたりはリモートワークが可能な職場に転職した。広樹さんは、2040年の有人飛行実現を目指す宇宙輸送ビジネス企業で、未来への挑戦を続けている。優佳さんは、医療現場の業務効率化を支援する医療系SaaS企業で、現場を支える仕組みづくりに尽力中。偶然にも、どちらもスタートアップ企業で活躍するチャレンジャーだ。さらに面白いことに、ふたりとも同じ日本橋エリアの企業に転職したため、通勤が必要な日にはドアtoドアで約2時間弱の電車通勤をしている。青梅市には、「青梅市遠距離通勤ENJOY応援金」という支援制度があり、移住者の通勤をサポートしている。この制度では、通勤を続ける移住者に対し、毎月5,000円が最大3年間補助される(2025年3月時点)。

    現在、通勤の多い広樹さんは、6:30頃に起床し、7:30には家を出て、帰宅は22:00頃。始発駅で必ず座って電車通勤ができるが平日は帰宅後すぐに寝る生活が続くため、今後はリモートワークを増やしていきたいと語る。一方、優佳さんはリモートワークが多いが、通勤の日も楽しんでいる。「片道2時間ほどあるので、連続ドラマを数本見たり、映画を1本見終えたり。家でじっと映画を観るのが難しいときもありますが、通勤中なら1本さっと見られるので、映画好きには都心通勤も意外と悪くないですよ」と笑顔で話す。

    地元との絆を深める、青梅暮らしの魅力

    30代夫妻のUターン移住。実際に移住してみて、どんな感想を持ったのだろうか? 優佳さんは、青梅駅なら都心へのアクセスもよいため、もっと都心に遊びに行くだろうと思っていた。しかし、実際に暮らしてみると、自然の近さに魅了され、気づけば車で青梅より西のエリアに遊びに行くことが増えている。「都内に暮らす着物好きな友人たちを誘って、河鹿園(かじかえん。国登録有形文化財である元・割烹旅館「河鹿園」の建物を利用し、歴史的な建物と書画を展示するガラスケースのない美術館)に出かけたんです。着物姿でみんなと一緒に記念撮影できたのは、青梅での大切な思い出になりました」とうれしそうに語る。

    一方、広樹さんは、地元の知り合いからの突然のお誘いを受けることが増えたそう。「先日も70代の知り合いの方から、“寺でみんなで楽器を鳴らして飲んでるからお前も来い!”と連絡があって、二つ返事で出かけたんです(笑)。年齢差も関係なく、サクッと誘っていただけるおかげで、飲み仲間も増えてうれしいですね」。青梅の関係人口を増やすことに貢献する優佳さんと、地元とのつながりを深める広樹さん。それぞれの役割を果たしながら、Uターン移住の新しい暮らしを楽しんでいる。

    地元の力を未来へつなぐ、ふたりの挑戦

    青梅をよく知るUターン移住者として、移住検討者のさまざまな相談に応じる「移住・定住コンシェルジュ制度」のコンシェルジュとなったふたり。まだ活動実績はないが、移住・定住者を増やすためにできることを考え始めているという。「移住において、仕事とコミュニティは重要な要素。仕事を創出するのはなかなか難しいですが、コミュニティの場づくりなら、僕たちも貢献できるかもしれない。いろんなことを“自分ごと”として考え、地域に貢献したいと考えています」と広樹さん。お酒好きなふたりらしく、日本酒やクラフトビールなど地酒を活用したイベントを主催してみたいというアイデアもあるそうだ。地元の生産者や移住者、そして地域の人々が気軽に集まれる場をつくり、青梅ならではの楽しさを共有したいと意欲を見せる。

    そして話題は、広樹さんが小さい頃から大好きだという「青梅大祭」へ。ふたりが暮らす青梅駅周辺は、毎年5月に行われるこの祭りの中心地でもある。「青梅を離れた友人たちと話すと、『また青梅に戻りたいなあ』という声を聞くことがよくあります。その多くが、町内で山車を引いた経験がある仲間たち。青梅大祭には、人を惹きつけ、街を出た人を呼び戻す力があるんですよね」。囃子が主役の山車が街を練り歩き、地域が一体となって盛り上がる青梅大祭。囃子の練習期間は長く、年齢や立場を超えた交流の場となっている。地元愛にあふれる夫と共に歩む優佳さんも、「私も青梅での暮らしを通して、自然体でいられる新しいコミュニティをつくっていきたいです」と微笑む。

    未来志向の仕事に取り組みつつ、自然豊かな青梅で地域とのつながりを大切にするふたり。その視点と行動力が、青梅に新たな風を吹かせる日もそう遠くはなさそうだ。

    Profile

    大谷 広樹 | 会社員
    大谷 優佳 | 会社員

    夫の広樹さんは東京都青梅市出身の30代。妻の優佳さんは神奈川県出身の30代。2024年5月から青梅市在住。新築戸建てに暮らしながら、共にスタートアップ企業で働いている。広樹さんのお気に入りの場所は、昔から愛してやまない地酒「澤乃井」と、川沿いの風景に心癒やされる「清流ガーデン澤乃井園」。一方、優佳さんのお気に入りは、青梅駅からの帰り道に広がる山並み。とりわけ、夕暮れどきに茜色に染まる景色は、何度見ても息をのむ美しさだという。

     

    ※取材:2025年1月

     

     

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